ポルスカぐらし

ポーランドを好きになるための記録

大げさすぎる、探し物のおはなし

 

自分がどこに居ようとも、そこでの滞在期間が1ヶ月を超えると生活リズムがどんどん完成されていくようで。良く言えば現地の生活に馴染んできた、悪く言えば新鮮味がなくなってきたように感じます。日々のルーティンからあっと心惹かれるような出来事をすくい上げるのが、少しずつ難しくなってきた頃です。

 

 

 

 

海外に行くと多少の不便に目を瞑らなければならないのは、恐らくあまりにも便利すぎる世の中に生まれた日本人の宿命なのではと私は思います。

バレンタインデーは1年間で私が唯一お菓子を手作りする日ですが、そんな皮肉な運命の巡り合わせに翻弄された日でもありました。

 

当日に新しく買ったキッチンスケールはデジタル式。街に出てキッチン用品を買い集め、帰宅してすぐその箱を開けた瞬間に、しまったと思いました。

電池、入ってない。

バッテリーに関する注意書きに記載された“not included”の文字に軽くめまいすら覚えるほどの落胆。

しかもボタン電池って。近くのスーパーに売ってるんかな。

ダイニングテーブルの上にさっき買ったばかりのキッチン用品を散らかしたまま、財布と取扱説明書だけをポケットに突っ込んで、何も考えず家を飛び出したのが午後2時を過ぎた頃でした。

 

 

一番近くのスーパーは日本のコンビニくらいの大きさで、元々品揃えも良くないためそもそも期待はしていませんでした。案の定、ぐるっと店内を一周して何も見つからなかったのですが、やっぱりかという余裕の感想。

そう、私にとっての本命は別にあって、その隣にあるROSSMANNというチェーンのドラッグストアの存在です。

 

ROSSMANNはドイツ系のドラッグストアで、シャンプーや洗剤など日用品や化粧品、ドライヤーなどのちょっとした小型の電化製品も取り扱っていて、個人的にとても信頼を寄せている利用頻度の高いお店でした。

 

ですがその利便性の高さゆえ、今日最も落胆させられた瞬間はこのときでした。

 

まっすぐ日用雑貨のコーナーへ向かいましたが、どうやら電池はなさそうです。ROSSMANNに置いてないなんて、じゃあどこで買えばいいんやろう。

ため息をつきながらぼんやり商品を眺めているとあることに気付き、えっ、と微かに独り言が漏れました。

 

キッチンスケールがここにも売っていること。

 

そして、そのスケールにはボタン電池が1個すでに付属していること。

 

私が今日買ったものと似たようなデザインなのに値段も半額程度安いということ。

 

 

灯台下暗しとはこのことでしょうか。実は気に入ったスケールを探すために既に数軒お店を回った経緯があったので、雷にでも打ちのめされたような気分でした。

 

 

悔しいやら悲しいやらで、半ば自暴自棄になって電池探しの旅を再開。

マップでめぼしい所がないか調べつつ、3分歩いた先の印刷用品店、さらに5分歩いた先のスーパーを訪問し、店員に尋ねるも売っていません。

 

募る焦りと苛立ち。

 

ようやく見つけたのは6店舗目に訪れたお店で、工具や部品を専門的に取り扱っているような小さな個人商店でした。優しい店主のおじさんに説明書を見せて商品を出してもらい、それをぎゅっと握りしめて帰宅したときには、時計の針が間も無く4時を指し示そうとしているところでした。

 

 

 

 

ポーランドに来てたまに感じるのが、こうやって何か特別手に入れたいものがあるとき、日本のコンビニや大型の小売店のように、ここに来ればまぁなんとかなるだろう、というようなオールラウンドの店があまりないので少し困るということ。

慣れてしまえばきっと平気なんでしょうが、今はどこに何があるか見当もついていないので、いちいち探し出すのに骨が折れます。

 

 

こうやって意地になって作り上げたベイクドチーズケーキの出来栄えは、可もなく不可もなくといった仕上がりでした。